ストーリー


第14話:TE-02
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「待ってたよ。もう、準備はばっちりだ」
 実験場に降り立つと、TAM所長は手を振りながら私たちを出迎えてくれた。そして、「さあどうぞ」と、私たちを初号機の近くへと導く。
「所長、実験っていうと、やはり何かを実際に転送してみるということですか?」
 歩きながらアトゥーマが尋ねた。
「よくぞ聞いてくれたね。そう。その通り」
 待ってましたという感じで所長が答えた。そこで、今度は私が、「いったい何を転送するんですか?」と、所長の期待する質問を投げかけてみた。
「何だと思う? まあ、見てみてくれたまえ」
 初号機のすぐ横までたどり着くと、所長は丸みを帯びた銀色の側面を、右の手のひらでぽんっと叩いた。
 あらためて近から見上げると、初号機はなかなか壮大な佇まいだ。高さ5m、横幅3mぐらいの卵型。床面は平らに仕上げてあるから、ちょうどゆで卵を立てたような形をしている。スライド式の入り口が開いているものの、入り口の目の前に機材が設置されているので、中の様子は私たちからはまだよく見えない。
「それでは、記念すべき最初の転送品を紹介しよう。……おーい! ちょっと出てきてくれ」
 所長は初号機の入り口に向かって声をかけた。すると中から、「ハーイ、ショチョウ、イマイキマス」と、特徴的な抑揚のない機械音声が聞こえ、パタパタパタと羽根を羽ばたかせながら、サッカーボールぐらいの大きさの小型球形ロボットが出てきた。
「ちょ、ちょっと所長、まさかTE-02を乗せちゃうんですか!?」
 私は腰が抜けそうになった。
 〈TE-02〉。正式には〈ティー・イー・ゼロ・ツー〉と読むけれど、私たちは親しみを込めて〈テーツー〉と呼んでいる。確か、アニメ部門ロボット担当の研究者が、有名なロボットアニメのマスコットキャラクターを再現して作った作品だ。もっとも、果たしてどれほど再現できているのかは大いに疑問の残るところで、残念ながら、あまりかわいくもかっこよくもない。いや、各パーツに問題があるわけでもないのだけれど、黄緑色の球形の物体に、目、鼻、口がリアルについているのが、おそらくはまずい。
 それでも、TE-02は、押しも押されもしない、私たちバスターガイザーの大切なマスコットとして君臨している。作った当人も、「あたし、別にイケメンとか興味ないんでー」と言ってかわいがっているみたいだから、きっとTE-02は幸せなのだろう。
「TE-02は頑丈だからね。それから何より、転送時の記録を取れるのがいい」
「……でも、ちょっとかわいそうじゃないですか? それに、もしも失敗したら……」
「バックアップは取ってあるから問題ない。何かあっても、箱さえ作ってやれば大丈夫だ。なんだったら、今度は俺がイケメンにしてやるよ」
「それって……でも……。ねえ、アトゥーマはどう思う?」
 私はアトゥーマに助けを求めた。初号機を見上げながら、彼はゆっくりと口を開いた。
「転送は、この初号機そのものが移動するわけではなくて、内部の物体だけを飛ばすわけですよね?」
「ああ、その通りだよ」
「負荷はどれくらいかかりますか?」
「3Gから16Gの間を予想している」
「……ずいぶんと幅がありますね」
「正直、やってみないとわからない。負荷を含め、あらゆるデータを取ることが重要だ。まあそれも、もしも成功したならばの話だがね」
「いずれにしても……」アトゥーマはTE-02に視線を移した。「人間の転送は無理。この子に託すしかない、ということですか」
「そういうことだな。……まあ、俺にも多少の忍びなさはあるんだが」
「ダイジョウブデス。テーツー!ゲンキ!ケーズ!デンキ!
 TE-02は私たちの頭の上をパタパタと気持ちよさそうに旋回している。
「……所長、またTE-02に変な言葉を教えましたね」


第15話へ続く



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