ストーリー
第1話:アトゥーマの夢
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26世紀初頭。世界は人類が自らの手で産み出した完全生命体ギガスパイアによって支配されていた。
ギガスパイアの支配下において、文学、美術、音楽、その他あらゆる芸術活動は、無駄なるもの、不完全なるものの排除という思想(デスパニズム)のもと、厳しく弾圧されている。人類は、いつしか歌を忘れ、笑顔を忘れ、そして愛を忘れてしまった。
第3ニューシティTAMA自治区。人類は、ここに秘密結社バスターガイザーを組織し、密かに芸術の復興を図った。わずかに残された資料から各分野の芸術を読み解き、そのアートエナジーの抽出を目指した。芸術こそが、人類自ら「完全」と定義したもの=ギガスパイアに対する楔となると信じて。
バスターガイザー研究開発部所属のアトゥーマは、音楽部門合唱担当の研究員である。彼は、実際に合唱を聴いたことも歌ったこともなかったけれど、人の「声」が折り重なって生まれるこの音楽芸術に、不思議な魅力と可能性を感じていた。いつの日か自分たちの「声」で合唱を奏でることを夢見て、彼は日夜、研究を続けるのだった。
しかし、ギガスパイアにとって、そうした人類の動きを察知することは容易いことである。西暦2512年、ギガスパイアはTAMA自治区掃討作戦を展開する。圧倒的な戦力の前にバスターガイザーは壊滅、最終防衛ラインSouth大沢までの後退を余儀なくされた。
そして、South大沢の研究所にもギガスパイアの攻撃の手が迫る。所長のTAM-タムは、試作段階の亜空間転送装置MEET-Leahの使用を決断した。各部門の研究成果から生み出されたアートエナジーをそれぞれのカプセルに封入し、過去の人類へと転送する。行き先は、ギガスパイア誕生の分岐点となった21世紀。人類救済の最後の望みを託し、崩れ落ちる研究所の地下室のなかで、TAM-タムは転送ボタンに手を置いた。
アトゥーマの思いが詰まった合唱カプセルは、2012年の南大沢上空に転送された。7色の光に包まれたカプセルは、無数の光の粒となって拡散し、地上へと落下していった。